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こんな日差しが強く暑い日には
福岡に住んでいた頃の事を思い出す。

親の都合で、小学校の4年生から終わりまでを
福岡の女子校に通っていたのだが
今考えても、色んな意味で良い学校だったと思う。

小高い丘の上にある校舎のベランダからは
有明海が一望でき
天気のよい冬の日には韓国の端っこが見えて
日本にいながらにして外国が見えるという
他愛のない事が面白かった。

学校へはスクールバスで通学していた。
たまに歩いて帰宅する事もあったけれど
自然が多いその道程は、
季節を感じる事ができて飽きる事が無かった。

ある土曜日の昼の事、
帰ったら何を食べようかなどと考えながら
スクールバスを降りると、
照り返しの強いアスファルト一面に
どこかの業者がごっそり落として行った
チラシが散乱していた。

私は、そのままスルーして帰ろうとしたものの
散らばったチラシの量が異常に多かったのと、
私よりも小さい男の子が1人、
ランドセルを道の脇に置いて懸命に拾っている姿を見て
そのまま知らぬふりも出来ず
結局、私もチラシを拾う事にした。

ある程度片付いた頃
チラシを拾っていた男の子が
「もう、このへんでよかっちゃろ。
あんたもお腹すいたやろうに、ありがとな」
と私に言った。

なんだ、小さいクセに
えらく仕切って来るなと思ったけれど
しっかりしたその口調に促され、
同意して帰る事にした。

その男の子とは帰り道が同じ方向で
途中まで喋りながら一緒に帰ったのだが
その時に「俺のこと、何年生やと思う」と聞かれたので
私は正直に「小学校3年生くらい…?」と言うと
彼は「あー、やっぱりな!」と少し悔しそうに答えた。

「俺、こう見えて6年生ばい」
私は自分より背の低い男の子が
自分よりひとつ年上だった事に驚くと同時に
申し訳ないと、平謝りした。

「気にせんでよかたい。いつもの事やけん」
と、白い歯を見せて笑う男の子に
私は「いや、まだ背は伸びるし。
これから伸びるよ、ぐんぐん」などと
励ましになってるのか分からない事を
もごもご言った。

健太郎と名乗るその男の子は
サッカーと学級委員をやっている
爽やか少年だった。
今にして思えば、言葉の端々に男気の見える
利発な子だったと思う。

正直、同年代の男子との接触は
ほぼ皆無に等しかった私にとって
「友達になろう」と手を差し出した
健太郎くんとの出会いは衝撃で
純粋に、とても嬉しかった。

残念ながら、結局その後
彼に会う事は無かった。
たまに、学校の帰り道に
彼の姿がないかと探す事もあったけれど
しばらくすると、その存在も忘れて行った。
程なくして私は大阪に戻ったし
あの場所へ行く事も、もうないだろう。
だから、この話に続きは無い。

それでも、たまに今日みたいに
アスファルトが眩しく光る日には
ほんの数分、私と一緒に並んで歩いた
背の低い影法師を思い出す。
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